パイプの魅力(1)
パイプの魅力は見方によって様々です。自分の思う要素を箇条書きにしてみました。
1.木彫美術品としての魅力
2.喫煙道具としての魅力
3.骨董としての魅力
4.浪漫小道具としての魅力
今回は1.について語ります。連載のつもりです。
パイプはブライヤーという、ツツジ科の植物の根の塊を削り出し作られた木製品です。瘤ともいえる肥大した地下根なので、密度のある木目が魅力です。
木彫なので、素材の良さと作り手の技術により、出来上がりの良し悪しが決まります。
作家は切り出されたブロックを仕入れます。その手によって、パイプは二つの要素から魅力と価値が生まれます。一つは木肌表面の美、もう一つは造作の美です。
木肌の美は木目、これをグレインと呼びます。木目とは木の繊維ですので、縦に切れば筋状となり、横の断面では点の集合となります。それがより均一に、そして密度高くあることが美しさです。
ブロックのカット次第ですが、より良い素材から、その中にある木目をどれだけ活かせるかが重要で、運と目利きが出来上がりを左右します。
木目を浮き立たせるために塗料を使い、赤と黒、または黃と茶のグラデーションに仕上げます。他にも、シックなマットブラックにゴツゴツとした木目の凹凸が自然のまま浮き出る加工や、荒々しく表面に刻みをつける加工など様々にあります。
やはり最高なものは、立ち昇るまっすぐな炎の勢いそのままが全面に現れたものでしょうか。
造作については、これこそ作家の表現要素です。古典に倣うことも、新たな意匠に挑戦することも、どちらにも正解はありません。個性、感性、美意識がパイプの存在を決定します。
自由でありますが、道具としての機能は備えていなければならない制約があります。どれほど美しく、どれほど斬新で緻密な造作であったとしても、喫煙具としての性能が低ければ価値はありません。
喫味の良さは、外見の美醜を超えて価値を高めます。
次回は、喫煙の道具としての魅力について語ります。良いパイプとは、見た目も重要ですが、本来の煙草を美味しく吸うための道具として存在しなくてはいけません。
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